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横溝康臣
山本尚之
馬場章夫
横溝康臣


<プロフィール>
よこみぞ やすおみ
1949年横浜市生まれ。1972年、第一ホテルに入社。前任地は東京の吉祥寺第一ホテル。O型。

千里ニュータウンのまち開き(1962年)から44年。阪急不動産は、2007年にかけて北摂千里に集合住宅を大量供給していく。ホテルマンとして東京やシンガポールなど様々な都市を見てきた横溝さんは、「これを機に、車社会より、ゆっくり歩く速さの社会にしよう。高層ビルの縦の広がりより、平面に広がってゆくまちにしよう」と発想の大転換を促す。

――千里阪急ホテルに赴任されて1年余り。北摂の印象をお聞かせください。

  「意外だったのは、大阪でありながら、お客様やスタッフの言葉があまり『大阪弁』という感じがしないことです。考えてみれば、このまちの歴史は浅い。昭和37年のまち開き以来、日本の高度経済成長を支えた世代、つまり当時の20代から40代が地方や都会からどんどん移り住み、子どもを育てた。だから当然、コテコテの大阪弁は聞かれないわけですね。もうひとつ感じたのは、お客様に、ご年配の方が大変多いということです。千里阪急ホテルは地域密着型のホテルで、利用されるのは主に地元の方々です。千里ニュータウンにやって来た第一世代が60代から80代になったということで、お客様も高齢化し、車いすの方もいらっしゃいます。少子高齢化が顕著に進み、日本の未来社会を象徴しているかのようです」

――そうした中、阪急不動産が北摂千里でマンションの大型プロジェクトを予定しています。千里ニュータウンの再開発もあり、北摂千里が変わっていきますね。

「いよいよ世代交代が始まりますね。もう“ニュータウン”という名前はやめたほうがいい。私の前任地の武蔵野市吉祥寺は、お寺を中心にした歴史あるまちです。千里ニュータウンとの大きな違いは、歴史の重みと商業施設の形態。吉祥寺では駅を中心に、7本くらいの駅前商店街が伸びています。その先に、東急百貨店、伊勢丹、パルコ、西友などの大型店があって、商店街も大型店も非常に活気がある。駅の1日の乗降客は40万人もあります。学校が多いのも特徴で、中学や高校、それに成蹊大学、東京女子大学、国際基督教大学など大学も多い。お寺もあり、若い人から、お年寄りまで行き来しています。サラリーマンや若者もどんどん入ってくる。井の頭公園とか若い人が集まる場所もたくさんあります。駅のまわりには飲食店やおしゃれな店、バーが集まっています。東京と大阪では規模が違うともいえますが、やはり私は『まちづくり』のビジョンの違いを感じます。千里中央の駅の乗降客は、おそらく10万人弱くらいでしょう。駅を中心に、阪急百貨店、大丸百貨店、せんちゅうパルがありますが、この3つだけで、一極集中なんです。まちづくりの面では、武蔵野市に学んでほしいですね」

――もう少し具体的に言いますと?

「千里ニュータウンは、高齢者が多い人口構成のまちになりましたが、武蔵野市はいろんな世代が行き来している、今後はそういうまちづくりが大切だということです。例えば、千里ニュータウンの緑は素晴らしい。これだけ公園や緑地帯があって緑が多いわけだから、もう少し歩行者や自転車に便利なまちになって欲しいですね。そうなると道路に沿って、ショップや飲食店ができる。また都心ではなく郊外都市ですから、高層ビルのように縦に広がってゆくのではなく、平面でひろがって欲しい。そうすれば、まちが活気づくはずです。千里中央の駅を中心に、シニアカーや車いす、ベビーカー、自転車、それにお年寄りや子ども連れの歩行者がブラブラできる生活環境です。まちのそこここには商店や映画館、コミュニティセンター、ホール、高齢者の介護施設がある。病院や学校がある。人々は、道路沿いのおしゃれな店でお茶を飲んだり、元気な人は介護施設でボランティアをするとか。素晴らしいと思いませんか?」

――まちの中で、ホテルは、どういう役割を果たしますか。

「うちのようなコミュニティ型ホテルは、いま申し上げた平面に広がってゆくまちの中の一施設であり、地域の人が立ち寄り、集う“場”を提供します。都心のシティホテルやビジネスホテルとは異なり、客室も持っていますが、宿泊はそんなに大きな比重を占めていません。例えば、今年4月から“歌声ホール”というイベントを始めたら、すごい人気なんですよ。ホールにピアノを置いて、ソングリーダーと一緒に、昭和30年とか40年頃の歌をうたうんです。50代から70代後半まで、毎回定員いっぱいの200名くらい集まります。箕面、吹田、豊中、摂津、茨木など北摂各地からいらっしゃいます。こういった秘めた潜在需要には驚きました。その需要を顕在化するには、やはり高層ビルの中では見えてこない。人々がすれ違ったり、困っている人に手を貸したりできるのは、平面的な広がりのまちでしょう」

――では、阪急不動産の新しいマンションは、北摂千里の中でどういう位置づけになるとお考ですか?

「最近では、郊外に戸建を持っていた人が、戸建は維持管理が大変だといって新しいマンションに入るというケースが増えていますよね。独り暮らしの高齢者も、庭の手入れや防犯も大変といってマンションに入られる。また、元気なうちに、介護付マンションに入る人も増えました。マンションも、どういうまちづくりをするのか、まちの中でどんな役割を持つのか、どんな世代がどんな暮らしをするのか、などを描いてから建てるべき時代なんじゃないでしょうか。行政との連携が必須だと思います。武蔵野市では市内を小型のコミュニティバスが走っています。ノンステップバスで、妊婦さんやお年寄りもラクに乗り降りできます。100円で乗り放題ですから、ステキな店を見かけたら、ちょっと降りてみようとか、そんな気持ちにもなるでしょう。事業主のマンション計画も『まちづくり』という視点が必要だと思いますね」

――いろんな世代が集える、孤独にならない仕掛けがある千里ニュータウンになるように願っています。ところで、ホテルマンとして34年。これまででいちばんよかったと思うまちは?

「シンガポールです。3年ちょっといました。商売はきつかったですが、やりがいのあるまちです。気候は、いまの大阪くらい暑い。男性は兵役に行くので、女性のほうが昇進のチャンスが多いんです。人口250万人で、観光客が年間700万人くらい。住んでいる人より、お客さんのほうが多い(笑)」

――最後にプライベートでの北摂の印象や、お気に入りのスポットを教えてください。

「毎日忙しくて、江坂の自宅へは、それこそ寝に帰るだけ。“もっと、ゆっくり、歩ける社会を”なんて言いながら、ほとんどホテルに詰めていて、プライベートがない。私の暮らしから変えるべきですね(笑)。定年後は、かみさんの実家がある長崎で、ゆっくり暮らしたいというビジョンはしっかり描いているのですが…」

――きょうは有意義なお話をありがとうございました。



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